■犬の食物アレルギーはアレルゲンを特定するまでが大変
愛犬が体をやたらとかきむしるので、毛をかきわけてみたら皮膚が赤くなっていた!
こんなとき、「食物アレルギー」の可能性を考えないでしょうか。
そこで、あわててアレルゲンフリーのドッグフードに変更してみたり、療法食を取り寄せてみたり……。
しかし、きちんと検査をしないまま食物アレルギーだと判断してしまうのは早計です。
もしも皮脂トラブルが原因のアレルギーやアトピー性皮膚炎だった場合、ドッグフードを変更しても症状が改善されないからです。
■食物アレルギーの特徴的な症状
体を痒がる。
皮膚が赤くなる。
これらは食物アレルギー、ノミやダニによるアレルギー、アトピー性皮膚炎のすべてに共通してみられる症状です。
しかしやはり似て非なるもので、きちんと確認するとそれぞれに違いも。
食物アレルギーではないアレルギーの場合、かゆがったり皮膚が赤くなったりという症状は体の一部にみられることが多く、あまり全身に症状が及ぶことはありません。
そして、ステロイドによって比較的症状がおさまります。
ところが食物アレルギーの場合は、全身に症状がみられることが多いのです。
なぜなら食物アレルギーの場合、アレルゲンが腸で吸収されて全身に運ばれてしまうからですね。
そしてアトピーやノミ・ダニによるアレルギーよりかゆみが激しいにもかかわらず、症状をおさえるためのステロイドが効きにくいという非情に厄介な面もあります。
また、食物アレルギーの場合は体の内部――胃や腸にも症状が出ているので、ゲリや嘔吐を伴いやすくなります。
こんなときはゲリ止めや整腸剤をいくら飲ませても効果はありません。
アレルゲンを取り除いた食事に変えない限り、症状が出続けることになります。
■IgE値が上昇したからといって即アレルゲンと断定できない
動物病院でパパっと血液検査をしてもらえば、アレルゲンが特定できるのでは?
……と期待したくなるところですが、残念ながらそう簡単にはいきません。
血液中のIgEという糖たんぱく質(免疫グロブリンE)の値によって、アレルギーを引き起こしているか否かを判定すること自体はできるでしょう。
しかし、食物アレルギーの場合は肝心なアレルゲンの特定までが困難なのです。
仮に食事によってIgE値が上がったとしても、アレルゲンとおぼしき食材が原因で数値が上昇したのか、それとも何か別の物質が原因なのかを特定しにくいのです。
しかも、食物アレルギーに加えて別の物質にもアレルギー反応を示していたり、もしくはアトピーまで併発しているような場合、アレルゲンが搾りきれないのにIgE値ばかりが高く示されてしまいます。
■感染症が食物アレルギーを見えにくくする
いずれにしろ、まずは感染症(ウィルス、マラセチアなどの真菌類、ダニ、ノミなど)の検査をすることになります。
その結果陽性と判定された場合は、犬アトピー性皮膚炎、または犬アトピー様皮膚炎と診断されて治療が開始されることになるわけですが……。
実はこの陽性判定が、結果として食物アレルギーの発見を遅らせてしまうことがあります。
アトピーの治療を開始したのになかなか症状に改善が見られず、その時点でようやく食物アレルギーもあるのではないか?と疑いをもつことになるわけですね。
感染症の検査で陰性判定さえでていればスムーズに食物アレルギーが疑われるわけですが、こればかりはいかんともしがたいところです。
■除去食試験によるアレルゲンの特定
感染症の検査によって陰性と判定された場合、もしくは陽性の判定を受けてアトピーの治療をしたにもかかわらず改善がみられなかった場合は、除去食試験によって食物アレルギーを引き起こすアレルゲンの特定が開始されることになります。
この試験は時間がかかるものなので、飼い主さんは腰をすえて真剣にトライしなければなりません。
<除去食試験の流れ>
症状がでた段階で食べさせていた食べ物にアレルゲンが含まれていると仮定し、第一段階としては今までに食べさせていた食べ物の一切を排除します。
そして代わりに除去食という特殊なドッグフードのみを6週間~8週間ほど食べさせて観察します。
※除去食とはアレルギーの症状が出ないように栄養成分を特別に調整されている療法食のこと。
その結果、症状に改善がみられた場合は、症状が出た段階で食べさせていた食べ物(ドッグフード、おやつ、人間の食べ物などを含むすべて)の中にアレルゲンが含まれている可能性が高いと判断されます。
■食物負荷試験によるアレルゲンの絞込み
除去食によって症状が改善されることが確認できたら、次はあえて症状が出たときに食べていた物を1週間ほど与えます。
この結果改善していた症状がぶりかえしたら、この食べ物の中にアレルゲンがあると確定。
この試験のことを食物負荷試験といいます。
■個別の試験でアレルゲンを突き止める
ここから先は根気との勝負になります。
これまでに食べさせていたものの中にアレルゲンがあると確定はできましたが、その中のどれなのかまではまだ判明していません。
そこで、この先はたんぱく質を1種類ずつテストしていくことになります。
肉類や乳製品などの動物性たんぱく質はもちろんのこと、小麦やトウモロコシといった植物性たんぱく質についてもすべて確認しなければなりません。
除去食にたんぱく質を含んだ食材を1種類ずつ加えてテストしていくのです。
かなり時間がかかりますが、これによってアレルゲンがきちんと特定できさえすれば、その後はそのたんぱく質を排除することで愛犬をアレルギーの苦しみから解放してあげることができます。
大変でもやる価値があるのは間違いありません。
■一刻も早くアレルゲンを特定して健やかな生活を
食物アレルギーがある場合、その多くは1才に満たない若犬の段階で症状が表れることがほとんど。
つまり、早くアレルゲンが突き止められれば、それだけ一生の中でアレルギーに苦しむ時間を短くしてあげられるのです。
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