『ドッグフードに植物繊維は本当に必要?』


ビートパルプとセルロース。
安全で安心なドッグフードを探している飼い主にとっては、入っていてほしくない原材料として認知されつつあります。
でも、それはいったいなぜなのでしょうか?

■ビートパルプの問題点

ビートパルプとは砂糖の原材料となる甜菜(テンサイ・別名/砂糖大根)を搾ったあと、その搾りかすから取り出した食物繊維のことです。
作り方は圧力を加えて繊維以外を分離させる圧搾と、薬剤を使用して繊維以外を溶かしてしまう製造方法があります。
なぜドッグフードにビートパルプが使われるのでしょうか?

善意的に解釈するなら、ビートパルプには水溶性と不溶性、その両方の食物繊維が含まれているため、整腸作用が期待できるからです。
犬の腸内も善玉菌、悪玉菌、日和見菌のバランスによって腸内環境が作られていますから、理屈としては間違ってはいないのですが……。

<問題点>
・ビートパルプの製造過程で使われた薬剤が残留していた場合、アレルギーの原因になる可能性がある。
・糖分が残留していた場合、肥満や糖尿病の原因になる可能性がある。
・本来肉食寄りの食性を持つ犬にとって、適量を超えた食物繊維が胃腸に負担をかける危険性がある。

■セルロースの問題点

セルロースとは植物細胞の細胞壁、つまりは植物繊維のことです。
野菜や果物に限らず、木材だろうがダンボールだろうが新聞紙だろうが、とにかく植物性のものであればセルロースと呼ばれるものを作ることは可能。
そのため、ビートパルプと同様に食物繊維という位置づけで使われることもありますが、ドッグフードにおけるセルロースは増粘安定剤としての役割のほうが大きいのではないでしょうか。
要するに、ドッグフードをまとまりやすくするために、接着剤として使われているのです。

<問題点>
・ポテトパルプ、オレンジパルプ、リンゴパルプのように、原材料が明確なセルロースに対し、セルロースとだけ記載されている場合は木材や紙類が原料ではないかと推察できる。
・セルロースは不溶性繊維のみで水溶性は含まないため、ドッグフードに使用した場合、犬の胃腸の負担になりやすい。

■ビートパルプとセルロースは人間側の都合によるもの

豆類やイモ類など、食物繊維を含んだ食材はいろいろとあるのに、なぜビートパルプやセルロースといった繊維を使うのでしょうか。
それは、ひとえに人間側の都合によるものと考えられます。

<飼い主にとってのメリット>
・ビートパルプやセルロースがウンチを固めてくれるため、べたつきがなく処理がしやすいウンチになやすい。
・ビートパルプやセルロースが使われていないドッグフードと同じ量を食べさせでも、カロリーが低い分ダイエットをさせやすい。

<製造メーカーにとってのメリット>
・野菜や果物に比べて安価なため、使えば使うほど製造コストを下げることができる。
・ウンチが固まりやすくなるおかげで、「お宅のフードを食べさせたら便がゆるくなった!」というクレームがつきにくい。

さて、こんなふうに人間にとってはそれなりに都合のよいビートパルプとセルロースですが、果たして犬にとっての良い食材といえるのでしょうか?

■食物繊維によるかさ増しは、百害あって一利なし

ビートパルプやセルロースなどの繊維質は、腸内で水分を吸収しながら便を絡めていくため、ウンチが大きくなりやすいのが特徴です。
そのため、問題なく排泄できた場合は、大きくて硬さもちょうど良い便に見えてしまいがち。
しかし、実際にはかなりいきまないと排泄できない場合も少なくないのです。
特に加齢などによってふんばる力が衰えた犬は、一気に便秘へと傾いてしまうことも。
さらには、大きくなりすぎた便は腸や肛門に負担をかけ、傷を作る可能性もあるのです。
また、食べさせても体重が増えないからと安心していたら、実はかさ増し用の食物繊維が多すぎて、単なる栄養不足に陥っていただけだった、という笑えない事態も。
こんなことになってしまったら、シャレにもなりません。

■ビートパルプとセルロースの併用に注意!

ビートパルプとセルロースは、多少の違いはあっても、どちらも植物性の繊維という点は同じです。
そして、だからこそ注意しなければいけないのは、この両方が使われている場合。
ドッグフードの原材料は、多く使われているものから順に記載されています。
性質が極めて似ているビートパルプとセルロースが各々記載されているということは、もしも一つにまとめたら、原材料欄に記載される位置はもっと前になるはずですよね。
つまり、かさ増しを目的として繊維質を多く使っている場合、ビートパルプとセルロースの両方を使うことで、原材料欄の印象を操作することが可能なのです。

■良心的なドッグフードとは


ビートパルプやセルロースを使用する目的が、必ずしもかさ増しとは限りません。
しかし、犬の健康のことを考えた良心的なドッグフードは、野菜や果物、豆類、イモ類などで食物繊維を調達しているのは紛れもない事実です。
メーカー側の言い分はどうであれ、大切な愛犬の健康を守れるのは飼い主だけ。
飼い主自身がきちんとしたドッグフードを選ぶ目を持つことが、なによりも大切なのではないでしょうか。


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