ワンコを愛する方へ



この内容はメールマガジン2003年12月19日号にて発行した内容です。
「ワンコを愛する方」にこそ 知っておいて欲しい、頭の片隅に置いていて欲しい内容です。
ショッキングな部分もありますので 読むか読まないかはお任せいたします。


 12月19日発行 発行者 日刊子犬生活
  「ワンコを愛する方へ」

==============================
この仕事を始めてから 早3年・・・
ワンコとの生活の素晴らしさを伝える事に没頭し、お客様の喜びの笑顔ばかりを自分の中で
クローズアップしていたように思います。

私は「この事実」をあえて避けて歩いてきたのかもしれません・・・

幸せワンコ生活を送るワンコ、反対に不幸な道を辿るワンコ・・・
今回は各市町村に存在する「保健所」に関してのお話です。

今までは ペット業界の腐敗ぶりに触れてきましたが
今回は「人間の愚かさ」に触れる事になってしまいました。
「何も出来ないおまえも同じ愚か者じゃないか!」 そういった声もあるかもしれません。
今の私には ただ伝える事しかできません。お許しください。

前置きが長くなりましたが事の発端は あるお客様との対話から。
「いつか ワンコを救う仕事を一緒にできたらイイですね!」 そんな始まりでした。
私は「とうとう その時期が来たかな・・・」と思いました。
「保健所」の存在はもちろん知っていたし 場所も知っている。
「目を背けたくなる現実」でしたが決心し保健所に電話しました。
そこで実際にワンコが処分される所にお邪魔する約束を取り付ける予定だったのですが、中には伝染病を持ったワンコが居る可能性もあるとの事で 仕事柄、今回は断念しました。

そこで向かったのが合同庁舎にある保健所衛生課。
獣医師の免許を持つ兵庫さんにお話を聞いた。軽く自己紹介をした後、色々聞いてみた。


私      
「ここ数年で捨て犬・迷い犬の数に変化はありますか?」

兵庫さん  
「昔に比べたらかなり減ってきましたよ、
当時は毎日捨て犬・野犬の保護なんかに奔走していましたからね。」

私      
「そう言われれば 野良犬なんてここ最近みませんよね。」

兵庫さん  
「そう。以前は収容するところが犬だらけになる事もありましたけど 
今は1週間に3匹くらいですね。」



後で頂いた資料に拠ると 岩手県では平成10年度5086頭保護され
平成14年度は1058頭まで減っている。
これだけのペットブームでも まだ1000頭以上が保護されている。
減少傾向にあるのは喜ばしい事ではあるが 岩手でこのレベルである。
都市部は比にならない数であろう。


私      
「ワンコを保健所に連れて来る人はどんな人が多いですか?」

兵庫さん  
「うーん、やっぱり飼い主が病気になったとか引越し、
もともと飼ってはいけない環境だったとかが多いですね。」

私      
「都市部のペットショップなどでは 
1年売れ残ったワンコを保健所に処分しに来るって話を聞いた事があるのですが・・・」

兵庫さん  
「ここらへんでは ありませんよ。やっぱり一般の方が殆どです。」

私      
「珍しい理由では どんなのがありますか?」

兵庫さん  
「うーん、犬自体の問題行動でしょうか。人を噛んだとか近所にうるさがられているとか。
そういえば 次の犬を飼うからと言って 今まで飼っていた犬を捨てに来た人もいましたよ。」



眩暈がした。
いや 気持ちでは卒倒して 救急車で運ばれているくらいの
ショック状態だった。


私      
「捨てられるワンコをどんな種類が多いですか?」

兵庫さん  
「殆どが雑種です。若い犬から老犬まで殆ど雑種です。」


また 気持ちが卒倒した。
私の飼っているワンコは雑種である。
お利口さんで 可愛いワンコだ。世界で一番可愛いと私は思っている。
雑種は純血種の欠点を補って生まれてくるから 優秀なのも当然である。
なぜ 雑種が捨てられるのだろうか?


兵庫さん  
「利口でスゴク飼いやすい子も捨てられます。呼べば来るしお手もおすわりもちゃんとする。
どうしてこんな子を・・・って正直思いますよ。」

私      
「情が移ったりする事はありませんか?」

兵庫さん  
「もちろん ありますよ。だから出来るだけ保護団体にも連絡を取って 里親探しもしてもらっています。」


兵庫さん、そして保護団体の方々ありがとう。
私は何もやってきませんでした。


私      
「里親探しや講習会を催していらっしゃいますよね?
盛岡では年間何回くらい行われていますか?」

兵庫さん  
「年間5、6回です。動物愛護法・狂犬病予防法・市の条例などの講習会を受けてから里親募集をするんです。」

私      
「何やら抽選会があるとか聞いたんですが・・・」

兵庫さん  
「そうですね。純血種やそれに近い感じの犬に人気が集中して結局 抽選という方法を取る事になるんです。」

私      
「他の雑種のワンコは引き取り手が見つからないわけですか?」

兵庫さん  
「そうです。純血種であれば欲しいという方は沢山いらっしゃいますミニチュアダックスいませんか?なんて電話もきたりしますよ。」



どういう事だろう?無料のミニチュアダックスが欲しいという事か?
それとも捨てられたミニチュアダックスだけが可哀相に思えるのか?
純血ってなんだろう。KENNEL CLUBで認められたスタンダードに 
人間は何を見出しているのだろうか?恐らく虚栄心のみ、ワンコを見つめてはいない、
純血種をつれて歩く自分しか見ていないのだろう。


私      
「そういった活動に県からの補助金などが充てられる事はあるんですか?」

兵庫さん  
「恐らく県は出さないと思いますよ。この先もきっと・・・」

私      
「もし仮に大きな運動を起こしたとしたら どうでしょうか?」

兵庫さん  
「どうだろう・・それはやってみない事にはわかりませんね。」


思い出しながら書いているので 淡々とした会話に聞こえるだろう。
誤解の無い様 言っておくが 兵庫さんは冷淡な人ではない。
むしろスゴク温かい人だ。次の会話を聞けば分かって頂けると思う。
具体的な処分方法に会話が及んだ時だ。


私      
「現在はガス室での処分が主な処分方法なんですか?
とっても苦しむって聞いたんですけど・・・」

兵庫さん  
「他の市や県はわからないけど、ここでは 2種類の注射でやっています。」

私      
「どうしてですか?ガスは使わないんですか?」

兵庫さん  
「ガスは二酸化炭素ガスを使用するんですか、あれは安楽死などとは言えないものです。」


私もどっかの本で読んだが、二酸化炭素ガスは時間が掛かる上
苦しみもがき、酸素を求め壁をよじ登るような行動をワンコは取るらしい。
効き目が薄いとそれが90分くらい続くのだと 兵庫さんは言った。


私      
「こちらではどんな薬を使っているんですか?」

兵庫さん  
「まず麻酔薬で眠らせてから 心臓の動きを止める薬を注射します
この方法が一番苦しまなくて済みます。
何年やっていても苦しむのを見るのだけはイヤなんですよ。」


兵庫さんに看取られたワンコは いくらか幸せだろう。
眠りの中で逝けるのだから。
ワンコが最後に見た夢はどんな夢だったんだろう・・・


私      
「保護されてから 処分まではやはり1週間の猶予しか無いのですか?」

兵庫さん  
「法的には最低3日間です。数が多いところでは1週間の猶予も無いでしょうね。
どこも ここみたいに古い施設じゃないから
機械的に次々ガスが送り込まれている所もあるかもしれないですね。」

私      
「それでは飼い主さんが探しに来たり 里親を見つける暇も無いんじゃないですか?」

兵庫さん  
「本当に探している人は方々に連絡していますから大丈夫です。
でも連絡が無い場合が殆どで それは いなくなっても構わないという事なんでしょうね。」

私      
「鑑札をつけているワンコはいないんですか?」

兵庫さん  
「殆どつけていませんよ。1割にも満たないんじゃないかな?」


そう言われれば私も付けていない・・・
付けよう。今日から付けよう。これを読んでいる方も是非つけて欲しい。


私      
「今後 保護されるワンコの数はどうなっていくと思われますか?」

兵庫さん  
「減っていくとは思いますが 飼い主の意識が低い限り0になることは無いと思います。」



皆さんも頭の中では分かっていると思う。
でもエゴのほうが意識より勝ってはいないだろうか?
「命の責任」を取らなければならないと思っていても「我が子にも いつか子供を産ませてみたい」などと
安易に考えてしまってはいないだろうか?
産ませたとしても 子供たちの里親は?出産後 母親は避妊するのか?
それとも 子供を産ませつづけるのか?
曖昧に考えてはいないだろうか?
「うちの子は男の子だから 関係ない」などと思ってはいないだろうか?
去勢していない放し飼いの男の子が近所の女の子めがけて
夜通し走り回っているのに。

私の感覚で ものを言って申し訳ないが
ペットブームは ピークを越したのではないだろうか?
ブームとは恐ろしいもので 傍から見ていた人までも 何時の間にか巻き込んでしまった。
意識の低い飼い主と意識の低い繁殖屋を増やしてしまった。
ブームと不況が重なって ブリーダーを志す人が増え、今現在でも ワンコが余り始めている。
それなのにショップはチェーン展開を始め、成功者ヅラしている。
私のような 無店舗ネット販売店の数も10倍くらいに増えている。
どちらもまだ「ペットブームは続く」と錯覚している。
無責任に産ませた繁殖屋の情報を無責任にネット上に垂れ流している。
「ブリーダー募集」などその最たる例だ。
頼むから募らないで欲しい。むしろ減らす努力をして欲しい。
このままでは数年後にまた保護犬数が増加するのではないかと思う。
「ブリーダーにはブリーダーの生活があるのだから」
そう言われるかもしれない。
これを読んだブリーダーから抗議の電話があるかもしれない。
でも私は怖くはない。
ガス室送りになるのに比べたら 何も怖くはない。

もちろん私にも責任がある。
ワンコ生活の楽しさばかりを強調し こういったダークサイドから目を背けてきたのだから。
これから そのツケを返していかなければならないだろう。

まだ何も行動を起こしていない私に言われるのは不愉快かもしれないが
もう一度立ち止まって考えて欲しい。
ワンコを飼いたいと思っている人は 全国に里親探しの団体がある事を知って欲しい。
知らない人がいたら教えてあげて欲しい。
純血種である必要なんか無い。「命」に純血種も雑種もない。
やむにやまれぬ事情でワンコが飼えなくなった人も同じ、
あらゆる手段を使って 絶対に飼い主を見つける事を諦めないで欲しい。


最後にジョン・レノンの「イマジン」の一節で締めくくりたい。
”You may say I am a dreamer, but I am not the only one."



長い文章にお付き合い頂きありがとうございました。



ページトップに戻る